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モンゴル帝国から見る食文化の現在

  • 2024年9月1日
  • 読了時間: 3分

きっと誰もが一度は歴史の授業で「チンギス・ハン」や「モンゴル帝国」は聞いたことがあるでしょう。モンゴル帝国(または元)というと、日本に攻めてきたとか、ユーラシア大陸のほぼ全土を支配したとか、あげればキリがないくらい歴史的には重要な国家でした。

もちろんあれだけの領域を約1世紀近く支配していると、世界中にモンゴルの文化が流入していきました。現存するその痕跡が「食文化」なのです。


私がドハマリしている某牛丼チェーン店「M屋」の「うまトマハンバーグ」を食べているとふと思ったのです。「一体このハンバーグという料理はどこからやってきたのだろうか」と。考えてみれば、わざわざ肉をミンチにして香辛料やらツナギ?やらを混ぜて焼くなんてめんどくさい事をどうしてしようと思ったのでしょうか。きっと、そうせざるを得ない理由があるのでしょう!そう思いながら「うまトマハンバーグのソース」を1滴残さず頂いた後、インターネットで調べてみました。


どうやら日本ハンバーグ協会によると、タタール人が食べていた「タルタルステーキ」を焼いたものがドイツの「ハンブルグ(Hamburg)」で流行っており、そこから「ハンバーグ」となったという説が濃厚そうです。タルタルステーキは元を辿ると、乗馬用に鍛えられた筋の多い馬肉を食べる際に、細かく切り刻んで鞍の下に敷いて走ることで、潰して食べやすくしたものだそう。それがモンゴル帝国の支配により、ヨーロッパへ流入したと考えるのが自然でしょう。


ということは、同じようにタルタルステーキが伝わった場所があるはず!ありました。同じく日本ハンバーグ協会によれば、朝鮮料理でお馴染みの「ユッケ」も同じタルタルステーキが由来のようです。やはり東西共にタルタルステーキは流入していたようです。

ただ、どちらの地域も馬は貴重な生き物ですから、食べるなんて…ということで牛肉が使われたようです。朝鮮では犬肉!?もあったようで…


しかし、現在のモンゴルの食文化を見てみると、タルタルステーキらしきものはあまり食べられていないように思われます。まして、現代のハンバーグに必須のコショウが使われ始めたのはつい最近のことだそうな!小長谷有紀氏によると、「コショウは、旧ソ連の影響を受けながら、社会主義の下で近代化をとげた時代にモンゴルに導入された香辛料である。」(小長谷有紀,「モンゴルの変わる食、変わらない食」,『食文化誌ヴェスタ』巻74,P.17,2009年5月1日刊行)とのこと。どうやらネギやニラ、ヨーグルトをはじめとした乳製品が圧倒的に食べられているようです。そして主食である肉は馬肉ではなく羊肉だそうです。


最後に、以上から考察すると、現代のモンゴル料理は清やソ連の支配により、定住化が進んだ時代のものではないかと考えられます。タルタルステーキの製法は馬に乗ることが大前提ですから、遊牧文化が失われた近代モンゴルでタルタルステーキが失われてしまったのも納得がいきます。


このように、「食文化」とはその国の、民族のアイデンティティとも呼べるものです。時代の変化に伴い、少しずつ衰退してしまうのは仕方の無いことですが、なんとか後世に残していきたいものです。近年、我が国の「和食」はユネスコ無形文化遺産にも登録されました。今こそ、和食の良さを再認識し、毎日美味しい味噌汁を飲みませんか?某牛丼チェーン店「M屋」なら味噌汁が無料でついてきますから、うまトマハンバーグ定食を頼んでみましょう。ハマりますよ。(期間限定なので終わっていても悪しからず。)


参考文献・サイト

日本ハンバーグ協会,「vol.01 世界のハンバーグ史のはじまり」,『ハンバーグの歴 史』, https://j-hamburg.org/history/u01/, 2024年8月17日閲覧

日本ハンバーグ協会,「vol.07 ハンバーグとユッケは親戚関係にあった!?」,『ハンバーグの歴史』, https://j-hamburg.org/history/u7/ ,2024年8月17日閲覧

小長谷有紀,「モンゴルの変わる食、変わらない食」,『食文化誌ヴェスタ』巻74,P.17-20,2009年5月1日刊行


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