天守と犬山城
- 2024年9月8日
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歴史に関する観光地ときいて、皆さんはまず何を思い浮かべますか?日本においては、長い歴史を持つ寺や神社、古代の遺跡、近代の工場跡など様々な歴史に関する観光地がありますが、それらの1つに城があります。
多くの人が城と聞いてまずイメージするのは天守ではないでしょうか。天守とは城を象徴する建造物であり、日本各地に様々なかたちの天守があります。特に有名なのが世界遺産に登録されている姫路城であり、世界的に認知度のある建造物です。
では、城の天守とは何のために建造されたのでしょうか。まず大前提として、城は戦争における防衛拠点や前線基地として建築されています。また、天守は基本的に城の最上部に位置し、城の周辺が見渡せる場所にあります。これらのことから、天守の用途は戦争において周辺の様子を俯瞰するための展望台であると考えられます。そして、城の最奥に位置することから、司令塔としての役割、最後の拠戦場(城に侵入された場合の最後の砦)としての役割、戦時状態における城主の居拠としての役割もあったと考えられます。それ以外にも、貯蔵施設としての役割や城主の威厳を示す役割もあったようです。
安土桃山時代や江戸時代には数多くの天守を持つ城がありましたが、実は当時の姿を残す現存天守は全国に12城しかありません。それらのうち姫路城、松本城、彦根城、犬山城、松江城の5城は国宝、宇和島城、松山城、高知城、丸亀城、備中松山城、丸岡城、弘前城の7城は重要文化財として保全活動がなされています。これら12城は幕末の動乱や、明治時代の廃城の動き、太平洋戦争下の空襲を乗り越えた城であり、歴史的に重要な資料であるとともにその現地の人々の心のよりどころとなっています。
ところで私は先日、愛知県犬山市にある犬山城に行きました。名古屋駅から電車を利用して犬山駅まで約40分かけて行き、犬山駅からは城下町の通りを通りつつ20分ほど歩いて犬山城に到着しました。城下町の通りを歩いていると、途中から小高い山の上に天守が見えました。天守へはその小高い山を道に沿って上り、その先の城門をくぐって、さらに先にある広場の奥に進むと着きました。

少し犬山城について説明します。犬山城は織田信長の叔父、織田信康によって築かれたとされており、中山道や木曽街道、城のすぐ北西に面する木曽川は交通の要所であったため、歴史上でも重要な拠点として登場します。例えば、織田信長は美濃(現在の岐阜県南部)へ侵攻する際に手始めに犬山城を攻略しています。犬山城は北側と西側に流れの激しい木曽川が流れており、防衛の時には南側と東側に注意すればよいため力押しするのは難しいのですが、信長はこの地形を逆手にとって南側と東側に木柵をびっしり並べて犬山城を完全に孤立させ、無血開城させたといわれています。また、羽柴秀吉と徳川家康が争った小牧・長久手の戦いにおける拠点としても登場します。(犬山市の南に位置する現在の小牧市や長久手市の周辺が主戦場となった。)その後は様々な武将が城主となりますが、1617年に成瀬正成が城主となると以降は彼の子孫の成瀬氏が城主となりました。明治時代の廃藩置県の際、犬山城は一度愛知県の管理下に置かれましたが、明治24年(1891年)の濃尾大地震で半壊した天守の修復を条件に成瀬家が再び所有者となり、平成16年(2004年)まで成瀬家の個人所有の城であったという珍しい城でもあります。(現在は公益財団法人の犬山白帝文庫が所有。) 犬山城天守の創建年代については諸説ありますが、令和元年から翌年にかけて行なわれた年代測定調査の結果、天正13年(1585年)から天正18年頃にかけて1階から4階までが一連で建設されたとみられ、現存する天守の中では最も古いといわれています。
話を犬山城に行った話に戻します。天守に入るとまずは急な階段が現れました。その階段は石垣に面しており、石垣の上に立つ天守の本体への階段でした。公式のホームページによると、この空間は地下1階、2階となっていました。1階は開けた空間であり、四方の風景を窓から見ることができ、また展示物もありました。さらに上に上がり、最上階につくと外に出るテラスのような空間がありました。そこからは北西の木曽川を挟んで岐阜方面の景色、南側の名古屋方面の景色を見渡すことができました。快晴ではなかったのですが、遠くまで見ることができました。防衛目的の城の天守がそのまま残っているだけあって、階段が全体的に急であり慎重に上り下りしないと危険でした。
最後に、私なりの城の楽しみ方を紹介します。城は天守が注目されがちですが、石垣や堀、門なども注目ポイントです。石垣や堀は敵の侵入を防ぐ上でかなり重要であり、それらを整備するには手間がかかるため、それらが大規模な城は重要な城であったり、強固な城であったりします。また、門に関してはまず敵に相対する場所と言うこともあり、侵入者を防ぐ様々な工夫がなされています。城を攻める、あるいは守る感覚で城跡内を散策するとかつての人々の気分を味わうことができ、とても楽しいと思います。また、特に高所の城の最上階から見る景色は壮観なので、上るのが大変かもしれませんが、高い城がおすすめです。
以上のように城は自ら歩いて歴史に触れあうことのできる場所です。日本各地には天守のないものを含めるとかなり多くの城があります。是非一度足を運んで、戦国時代や江戸時代に思いを馳せてみませんか。
参考文献・サイト
オフィス五稜郭『現存12天守』双葉社、2013年
西ヶ谷恭弘・多桗正芳『城郭みどころ事典-東国編』東京堂出版、2003年
犬山観光情報『国宝犬山城』https://inuyama-castle.jp, 2024年9月5日閲覧
犬山城白帝文庫文化館『国宝犬山城』(パンフレット)、2024年
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